おばさん社労士の発信基地 きぼうという名の事務所です。

開業してからまる10年「発信する社労士」を目指して「独立独歩」「自主自立」の活動をつづるブログです。

正規社員と非正規社員の不合理な差異の判断

今朝の朝日新聞の一面では、昨日の東京地裁判決を大きく取り上げていました。
日本郵便の配達などを担当する契約社員と呼ばれる非正規雇用者の正規雇用者との差別的待遇について一部訴えを認めた判決です。今後、判決文の原文を確認することができるようになると思いますので、是非それは読んでみたいと思いますが、報道によると、日本郵便には約40万人の社員のうち半数が契約社員その他の非正規雇用者ということで、影響は大きいものと思います。
新聞報道だけなので、詳細は不明ですが、同社の契約社員3人が訴えたのは、期間の定めがあることのみにより、期間の定めのない労働者と比べて不合理な労働条件の相違を禁止する労働契約法20条を根拠としているようです。
同規定では、「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して」不合理と認められる労働条件ではいけないとしています。
従って、もし、職務内容や責任の程度などが全く同じであるなら期間の定めがある人とない人とで同じ労働条件にしなくてはいけないことになりますが、多くの会社では、責任の度合い、転勤の有無などが違うとして労働条件に差をつけているはずです。
今般の判決は、賃金制度上の違いは認めつつ、細かく手当の内容について比較してこの手当は正社員の8割、この手当は6割払いなさいとしている点が注目すべきところでしょう。


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副業、兼業は許可制で

 先週末の夜、夫とぼんやりとテレビを見ていた時のニュースで言っていたことなので、全然うら覚えで不確かな情報なのですが、企業が副業を認めることを押し進めるように労働者側の団体が要望したというようなニュースでした。
「そんなに働きたいのかねー。」「仕事より趣味に費やす時間が増えた方がいいよねー」と怠け者?のオジ・オバはつぶやいたのでした。
世の中の流れは副業・兼業を認める方向のようで、今まで残業していた分の時間が「働き方改革」で余ってくると、その時間でなにがしか稼げれば助かるという人や、会社だけに縛られたくないとか、会社としても、他の仕事をすることにより視野が広がり本業にも効果があると積極的にプラス評価する企業もあるようです。
私は、就業規則を作るときには会社の許可なく副業や兼業を禁止します。言い換えれば、会社が「いいですよ」と言えば副業ができるということにしています。
労働者側の個人的事情や副業の内容により会社に認めるか否か裁量権を持たせる内容としているというわけです。

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長澤運輸事件 高裁判決文を読む(2)

 昨日、長澤運輸事件の高裁判決文の全文を読んで記事を書きましたが、書き足りない点について補足的に書いておこうと思います。
高年齢者雇用安定法(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)により、現在60歳未満の定年は設定できません。また、定年後、希望者全員が65歳まで働ける継続雇用制度を設けるか、定年制を廃止するかの措置をとることが企業に義務づけられています。(平成25年3月31日までに労使協定で基準を設けている場合は61~65歳まで段階的に設定できる例外がある)
継続雇用制度は、定年年齢に達した後もそのまま契約を続行する場合と、いったん定年退職として退職金を支払い、その後あらためて嘱託等として雇用契約を結ぶというやり方があります。
60歳を定年としている企業の場合、退職金の設計もそれを前提としていますので、いったん退職金を支払い再度雇用契約を結ぶという場合が多いようです。
多くの場合、職務内容を軽くしたり責任の度合いを減らしたりして有期雇用とする契約となります。当然賃金は下がります。
しかし、中には待遇は下がったが定年前と全く変わらない仕事を任される場合もあります。

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長澤運輸事件 高裁判決文を読む

 長澤運輸事件は、昨年11月2日の東京高裁の判決です。
運輸会社のトラック運転手3人が定年退職後再雇用の嘱託(1年の有期雇用)となり、定年前と同じ仕事をしているのに賃金が減額(20%~24%の減額率)されたのは、有期雇用であることをもって正規雇用者と不合理な差別を禁じている労働契約法20条に反しているので契約は無効であり、嘱託社員の就業規則ではなく正社員の就業規則を適用して賃金も支払うべきとしたものです。
予備的には、本来支払われるべき賃金が支払われなかったのは公序良俗違反であり、民法709条に基づく損害賠償も請求しています。
高裁に先立ち、5月13日にでた東京地裁判決では、労働者側の訴えが認められましたが、会社側が控訴した東京高裁では、逆転して会社側勝訴となりメディアでも話題となりました。
裁判結果については、判決文全文を読まないと見えてこない部分も多いので高裁の判決文を読みたいと思いつつ、ずるずると時が過ぎておりました。
したところ、先日、所属する社労士会の研究会のメンバーの一人が入手した判決文全文をスキャンして送ってくれました。
持つべきものは社労士仲間。情報のおすそわけに感謝です。

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夫婦同姓は憲法違反か?(2)

 昨日の続きです。
最高裁は、婚姻により姓が同一となり社会の構成要素である家族の呼称として意義があり合理性があること、改姓については夫婦の協議により自らの意思により行われ強制されてはいないなどとして、多数決により憲法違反ではないとして、上告を棄却する判決を出しています。
補足意見を述べた女性裁判官は、多くの妻が結婚後家庭に入り家事・育児を担っていた時代には、問題がなかったが、近年の女性の社会進出により、個人、会社、機関その他で独立した法主体として契約や経済活動などを行うようになったため、改姓により別人と認識されることなどによる不利益を受けるようになったとしています。
また、この民法の規定が国連の女子差別撤廃委員会からも差別的規定としてたびたびその廃止を要請されていることにも言及しています。
96%の夫婦が男性側の姓になることについても、アイデンティティの喪失感などを持つこともあり得るだろうとしています。多くの妻が自分の意思で決めるといっても、女性の経済的社会的弱さ、立ち場の弱さ、種々の事実上の圧力などの要因がある結果だとして、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえないと明確に否定しています。


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夫婦同姓は憲法違反か?(1)

企業実務1月号今月発売となった日本実業出版社の『企業実務』2017年1月号に、「どう考える?ビジネスでの旧姓使用」と題する原稿を書かせていただきました。
結婚・出産後も働く女性が増えて、結婚により改姓しても旧姓のまま働くことを希望する女性が増えています。
離婚、養子縁組などでも姓が変わりますが、業績や評価など別人とされて不利益となる場合もあり、国家公務員の場合は、国立大学の女性教員が提起した裁判をきっかけとして、2001年10月より職場で通称として旧姓を使用することが認められています。
大企業を中心に認める会社も増えていて、職場での旧姓使用の拡大が見られるため、それについての社会的流れ、法律的背景、及び行う場合の労務管理等について書かせていただきました。
誌面スペースの関係で関連する裁判について、書けなかった判例があるので、当ブログで書いておこうと思います。

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定年後の再雇用の賃金

先月、東京高裁で定年後の再雇用について賃金を引き下げたことは、違法ではないとする判決があったと報道されました。
書こうとしていて書きそびれていたので、今日、ちょっと書いてみたいと思います。
この裁判は、今年の5月に東京地裁で労働者側が勝訴していましたが(
過去記事参照)、経営者側の控訴を受けて高裁が地裁判決を取り消す形で経営者側が逆転勝訴したものです。
労働者側は上告しましたので、判断は最高裁まで持ち越され、今後注目すべき裁判になると思います。
訴えていた労働者はトラックの運転手さんで、定年後再雇用で期間を定めて働く嘱託となりましたが、仕事は全く同じなのに、賃金が2~3割減額になったのは、労働契約法20条違反だとしています。
このあたりは過去記事に書きました。
労働契約法は平成20年3月施行の新しい法律ですが、その後改正されて期間の定めがあることによる不合理な労働条件を禁止しています。
司法の場で初めてこの条文を根拠として訴えが提起されたのがこの裁判です。

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契約社員に対する不合理な差別

 昨日、同一労働、同一賃金に関連する記事を書きましたが、有期契約労働者に対して不合理な差別かどうか判断する基準に責任や権限、その他が入ってきてハードルが高いと書きました。
今日の報道によると、トラック運転手として働く契約社員が正社員と同じ仕事をしているのに各種手当がないこと、賃金格差があることなどについて、期間の定めがあることによる不合理な差別をされているとして訴えた裁判で、大阪高裁が訴えの一部を認めたそうです。
裁判所は、転勤、出向などの面で契約社員と正社員の違いを認め、賃金格差については合理性があるとしたようですが、7種類ある手当のうち、給食、通勤、無事故、作業の四つの手当は、職務内容による直接の差がないとして支払いを命じたと報道されています。
一審では、通勤手当の支払いのみ認められたそうですが、高裁ではさらに拡大しているようです。
給食は、契約社員も食事するのは同じですし、「無事故手当」についても無事故なら出さなきゃおかしいし、「作業手当」というのが詳しくはわかりませんが、トラック運転という作業に対する手当なら、契約社員もトラック運転をしているのですから、出さなきゃおかしいという考え方だと思います。

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