おばさん社労士開業記 きぼうという名の事務所です。

試験合格後1年もしないうちに開業しちゃったおばさん社労士、 事務所はあるが客がない! さあ、どうする?それから3年 「独立独歩」、「自主自立」を信条として、一歩づつ進む日々の雑感をつづるブログです。

出産のための休業、育児のための勤務時間短縮、賞与はどうなる?

労働関係の判例で興味深いものがあったのでご紹介したいと思います。


ある学校法人の賞与規定に「出勤率が90%以上の者に支給する」と定めてありました。


女性職員のAさんが、平成6年の7月に出産して8週間の産後休業取得後、育児のために1日につき1時間15分の勤務短縮措置を受けました。事業主側は平成6年の年末賞与について、産前産後休業、並びに生理休暇は欠勤扱いとするとしたため、Aさんは90%の出勤率を充たすことができず、賞与は支給されませんでした。


平成7年度の夏季賞与については、育児のために勤務時間短縮措置を受けた者については、短縮分を欠勤日数に加算するという規定が追加され、またしてもAさんは賞与を支給されませんでした。


Aさんは賞与支払を求めて提訴しました。

地裁、高裁ではAさんの請求が認められましたが、最高裁では一審、二審同様、90%条項において、産後休業や育児のための勤務時間短縮を欠勤扱いすることは、法律により保障された権利等の行使を抑制するもので、公序に反し無効と認めましたが、賞与額の算定については休業や短縮分を減額することは直ちに公序違反とは言えず、その点の判断を尽くすようにと、破棄・差し戻しとしました。(最高裁、判決平成15.12.4 東朋学園事件) 


使用者側は、賞与について通常の賃金とは性格を異にし、任意恩恵的なもので、支給の決定、基準等については使用者の裁量に委ねられていると主張しましたが、判決では「労働者の年間総収入に占める割合が大きく、功労報償的、利益分配的な面があるとしても、賃金に準ずるものと見て検討を要するものというべき」としました。


判決の中で、この法人の就業規則にある他の特別休暇、結婚や父母等の死亡や法要、男性職員の配偶者が出産した時の休暇(5日間)については、賞与支払算定の欠勤扱いとはしていないことに触れ、もっぱら女性がとることになる出産や育児のための休暇のみ欠勤扱いするのは、女性差別にあたるとしています。


通常「ノーワーク・ノーペイ」の原則があり、働かない分について賃金を支給する必要はありません。しかし、判決ではその点についても触れて、他の休暇との取扱いに著しい差異があり、ノーワーク・ノーペイを超え制裁的なカットは問題があるとしました。


「ノーワーク・ノーペイ」ということについては、既に通常の賃金が無給であるというところでその処理は済んでいるという考え方もできるので、一審、二審では、賞与全額支払いを認めたものと思われます。


でも、100%働いた人と差をつけるのは違反とは言えないので、その点を検討し直すようにというのが最高裁の判断です。


この事案で問題となるのは、産後休業や育児のための勤務短縮など、法律で権利が規定されていて、労働者側はその権利を行使しただけなのに、労働者側に責任のある「欠勤」と同列にしたことです。それは明確に無効とされました。


また、不利益をこうむるのがもっぱら女性になってしまうのは合理的でないということについても言及されているので、「間接差別」の問題ともからめて、使用者は注意するべき問題だと思います。賞与支払基準に関してそのつど回覧を回すなどというやり方も感心できません。


会社も社員も納得できるような規程を作成して、周知徹底するべきだったと思います。


判決文を読むとAさんは未婚のシングルマザーのようです。納得できないことに対して行動を起こすというのは勇気がいると思いますが、声を上げない限り変わらないので、このような判例は今後の参考として貴重だと思います。


それにしても時間がかかっていて、当事者は大変だと思いました。

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コメント


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今日も素晴らしい記事、興味をそそる判例をありがとうございます。

私も早速判例を拝見致しました。

記事にもありますが、今回の争点は出勤率の取扱いですね。

出勤率の算定に関する要件と言えば労働基準法の年次有給休暇の項目に定めがありますが、出勤率の算定にあたって、業務上負傷し療養のために休業した期間、産前産後の休業と育児・介護休業の期間は出勤したものと取り扱うと明確に定めています。

このことから考えると賞与であれ退職金であれ労働基準法上の賃金であるわけですから、出勤率を要件とすることは労働基準法の年次有給休暇の出勤率の取扱いを基礎とすることがごく自然であり、労働条件の最低限の基準であるのだと私は思います。

判例でも「産前産後休業や勤務時間短縮措置による育児時間のような権利や利益は労基法等で保障されたものであり、それらの権利・ 利益を保障した法の趣旨を実質的に失わせるような賞与支給の要件を定めることは許されない。」と言っています。
これは年次有休休暇の取扱いと同じ事だと思います。

そうなると当然今回の事案である出勤率の取り扱いは当然無効ですね。

企業側の対処法としては、産後休業期間、短時間制度の短時間部分の時間は出勤率の算定にあたっては労働したものとみなすが、実際の支給額の算定にあたっては減額すると給与規程に記載していればなんら問題はなかったと思われます。

社労士は就業規則のプロですから今回のような就業規則を作成しないようにしなければなりませんね。

勉強になりました。ありがとうございました。

卯年 | URL | 2007年04月17日(Tue)18:58 [EDIT]


卯年さん
こんばんわ。

早速コメントありがとうございます。
こんな裁判をしなくてすむように、経営者は労働基準法を理解するとともに、就業規則の重要性を認識してほしいと思います。
私たち社労士がそれをアピールしていくべきなのでしょうが、個人ではなかなか思うようにはいかないですね。

判例については、興味深いものを随時ご紹介したいと思います。
どうぞよろしくお願い致します。

おばさん社労士 | URL | 2007年04月17日(Tue)21:47 [EDIT]